障害種別による配慮等事例集 はじめに 平成28年4月に「障害者差別解消法」が施行されました。この法律は、行政機関や民間事業者を対象に、障害を理由とする「不当な差別的取扱いの禁止」や障害のある人への「合理的配慮の提供」などを定めているものです。障害のある人とは、障害者手帳の有無にかかわらず、日常生活や社会生活に相当な制限を受けているすべての人をいいます。また、合理的配慮とは、障害のある人が困っているときに、その人の障害に合った「方法」や「工夫」で対応することをいいます。 障害のある人への差別の解消をすすめていくためには、「どのようなことが差別になりうるのか。」「どのような配慮が必要なのか。」を具体的な事例を通して、多くの方に知っていただき、共に考えていくことがまずは大切なことと思います。そのため、平成28年7月から8月にかけて、広く市民の皆様に事例を募集したところ、多くの事例が集まりました。 障害の種別によって必要な配慮が異なります。また、障害の程度が軽い人もいれば複数の障害を重複している人もいますので、同じ障害でも配慮については、その人に応じて異なってきます。 このようなことから、障害の種別ごとに、集まった事例をまとめ、事例集を作成いたしました。障害種別の特性を理解していただくとともに、「こうしてほしかった。」「こういう配慮があって助かった、うれしかった。」という事例を通して、多くの方が合理的配慮について考え、話し合い、実践に結びつくことで、だれもが住みよい狭山市となっていくことを切に願います。 この事例集をまとめるにあたり、狭山市障害者差別解消支援地域協議会、障害者団体の方に貴重なご意見をいただきました。ありがとうございました。 なお、掲載した事例は、多少の文言の整理をし、個人が特定される場合は表現を変更したところもありますので、あらかじめご了承ください。 平成29年3月  狭山市福祉こども部障害者福祉課    ページ2 1視覚障害   視覚障害とは 生まれたときから、あるいは疾病により、視機能に障害があることで、「全く見えない」、「ぼやけて見える」、「見える範囲が狭い」(中心又は周りが見えない)、「色の判別がつかない」、「光がまぶしい」、「暗いところがみえにくい」など様々な症状があります。 <例えばこんなことに困っています。> ・音の出ない信号機や交差点では、車の音など耳からの情報を頼りにして渡らなければなりません。 ・慣れない場所など、一人で移動することが難しいです。 ・自分がどこにいるのか、そばに誰がいるのか説明がないとわかりません。 ・文字の読み書きが難しいです。 ・点字ブロックの上に自転車などがあると、ぶつかって転んでしまうことがあります。 ・郵便物は、大事な手紙かどうか区別がつきにくいです。 ・店内に入ったときに、空いている席やトイレの場所が一人ではわからない。キョロキョロしていたら声をかけてくれると助かります。 <障害のある人への配慮の好事例> ・狭山市駅開発で駅にエレベーターが設置されたことは通勤のみならず暮らしの動線が大変楽になった。帰省時のバスのチケットも駅で購入できる。 ・駅構内で黄色い点字誘導ブロックがあり移動しやすい。また目印がある階段は分かりやすく、使いやすい。 ・全部の車両ではないが、西武線の車両のドアのふちと足元に黄色のラインが入っているのは、見やすい。 ・黄色い点字ブロックがあると、歩く目印になり助かる。 ページ3  <差別と思われる事例> ・押しボタン式の信号機は、信号が変わったことがわからないため、周囲の気配で渡っている光景がある。音声があれば、大変助かると思う。 ・智光山総合体育館の障害者用駐車場を使っているが、障害者でない方が駐車していて、使えないときも多々ある。そのため、目の不自由な方が暗い道を歩かなければならず、危険である。 ・駅から障害者福祉課まで点字ブロックが続いている点は良いが、点字ブロックがグレーは分かりにくい。黄色が一番見やすい。 ・銀行のATMの画面操作は出来ない。音声案内を利用するが振込みはできない。窓口では事前に記入する用紙があるが、一人だと記入は難しい。 ・カード支払いをしたとき、暗証番号を入力することができないため、サインでお願いしたことがある。 ・商品の説明を求めたとき、「ここにあるだけになります。」「このような○○」と言われてもイメージできない。イメージできるように説明してほしい。 ・トイレは、流し方がボタンやレバーや足踏みなど様々なため、流し方がわからない。声をかけてもらったうえで、手をとり、流すボタンを触って確認できるとわかりやすい。どこに行ってもトイレは困る。 ・メニューが見えないため、同じものを頼んでいる。 ・お冷を出してもらったとき、どこに置いてあるのかわからない。テーブルのどのあたりに置いたか教えてほしい。 ページ4 2聴覚障害 聴覚障害とは 生まれたときから全く聞こえない方、聞こえにくい方がいます。 また、病気や事故、高齢によって聞こえなくなる(高齢性難聴)方もいます。外見ではわかりにくいため、周囲の人に聴覚に障害があることに気づいてもらえないことが多くあります。 <例えばこんなことに困っています。> 外見ではわかりにくいため、後ろから声をかけてられても分からない場合があります。 呼び鈴や自動車の音などの日常生活音や社会音に気づかないことがあります。 緊急時のアナウンスや災害時の情報がわからないことがあり、どのように対応したら良いか困ります。 一部の方に、筆談をしても難しい言葉を理解することが困難な方もいます。 コミュニケーションの方法(手話、口話、筆談など)は、その人により異なります。すべての聴覚障害者が手話を使えるとは限りません。 中途失聴(病気や事故などにより、途中で耳が聞こえなくなった)の方は、話はできますが、聞くことが難しいため、誤解されることがあります。 <障害のある人への配慮の好事例> 始業朝礼時に、職員全員で簡単な手話単語を学習する時間(1~2分)を設けた。 飲食店や販売店などで、簡単な手話やメニューボード、コミュニケーションボード、実物を示すなど目で見てわかるように伝えてくれるようになった。 店のサービスカウンターで、聴覚障害の客に配慮する対応(口を大きくあけて話す、筆談をするなど)がみられるようになった。 ページ5 <差別と思われる事例> 職場で場内放送があっても、何も情報の配慮がない。いつもどおり仕事をしていて、怒られたことがある。 以前、聴覚障害者お断りという自動車学校があった。聴覚障害者同士で情報交換し、更に学校に行って確認してから受講することができるようになり大変だった。 市外のアスレチックのある公園で、聴覚障害者は入園できないと言われた。説明してようやく入園できたが、子どもに悲しい思いをさせた。 海外旅行で、聞こえる人の付添いの条件がついたり、聞こえない人の申込みは受けられないと拒否された。 夜、トイレの水漏れがあったとき、4ヶ所の業者に断わられた。やっと見つけた業者で、「依頼主は耳が聞こえない。」と伝えたところ、伝達に不安をもった様子。筆談でやりとりできること、来客の時はランプでわかることを伝えたが、来てもらえるのかはっきり答えてもらえなかったため、こちらからお断りした。 職場会議では、企業秘密もあり手話通訳者を依頼することは会社側が認めない。そのため会議から外される。ノートテイクは質疑応答に追いつかないので、参加できない。学会も手話通訳者の派遣を認めず、また、専門用語が多くて手話通訳者には限界がある。 銀行のATMで操作がわからないとき、電話での問合せができない(時間外)。 高速道路で交通事故にあった時、こちらは被害者なのに警察の聴取が後回しにされ、加害者から先に聞いていた。 補聴器をつけていたのに、イヤホンと勘違いされ注意された。 ページ6 3肢体不自由 肢体不自由とは 先天性の病気や事故などにより、上肢・下肢・体幹の機能の全部又は一部に麻痺や欠損がある障害です。立つ、座る、歩く、物を持ち運ぶなどの日常生活が困難な場合があります。 <例えばこんなことに困っています。> 車いす、歩行器、杖などを利用している方は、ドアの開閉や高い場所や低い場所の物の取得、段差のある場所や坂道などで困ることがあります。 麻痺や筋力低下等により、食事やスイッチなどのボタン操作、書字や物の上げ下げなど、細かい作業に困ることがあります。 発語の障害により、コミュニケーションが難しいことがあります。 体温調整が困難な方もいます。 車を運転する方は、乗り降りに広いスペースが必要です。障害者マークのある駐車場が空いていないため、不自由な思いをすることがあります。 車いすを利用している方は、限られたトイレ(多機能トイレなど)しか利用することができません。一部の不適切な利用により、利用できない場合があり困ることがあります。 <障害のある人への配慮の好事例> 多くの場所でバリアフリーの対応や障害に対する配慮がなされていると実感する。 足の悪い様子を見て、乗車するとみんなが席を譲ってくれた時はうれしかった。 乗車する際に、乗客が大勢並んでいたが、安全のために、優先的に車いすに乗っている自分を先に乗せてくれた乗務員がいた。 ページ7 食事に行ったお店に段差があり、どうしようかと悩んでいたところ、従業員の2人が出てきて、「すいません、段差があって・・・。手伝いましょうか」と母を車いすに乗せたまま、補助して持ち上げてくれた。家族で食事を楽しむことができた。 レストランで予約なしで突然行っても、持ち運べる木板が用意されていて、車いすでも難なく席に着くことができた。 ドアの開閉を進んでやってくれたり、食器の変更(平らなものは使いづらい場合がある)にも快く応じてくれるレストランもある。 レストランで手が不自由であることを判断して「何かご用意しますか」と声をかけてくれた時はうれしかった。 スーパーで単独で買い物をする時、サービスカウンターで依頼すれば販売員が一人付き、どんなときも快く買い物をサポートしてくれる。もう8年間継続してやってもらっている。買い物をしながらの自然な対話の中で人的な交流が出来、とても有意義な時間を共有させてもらい感謝している。 「狭山七夕祭り」(入間川七夕まつり)の花火を見るとき、運動公園の芝生で、車いすが動かず困っていると、車いすを押してくれる人や懐中電燈で照らしてくれるご夫人がいたりして、とても暖かい気持ちになった。 劇場の中で、フリーの案内係がいて案内をしてくれ、車の乗降時も手を貸してくれ、助かる 車いすや杖歩行の人がたくさん住んでいるので、子どもから大人まで、自然にエレベーターのドアを押さえておいてくれたり、「お先にどうぞ」と声をかけてくれたりする。 主治医は、自分からドアを開けて、車いすで入れるように気を使ってくれる。診察が終われば、ヘルパーにも「終わりましたのでお願いします」と一声かけてくれる。 帰りの車を手配していた時間を大幅に超過してしまうこともあったが、ヘルパーも移送車も対応してくれて、ありがたかった。 学生生活がスムーズに送れるように、トイレの改造(洗浄器付トイレ、車いすスペース)、介助人の待機室、ホームルームの1階(3年間)、段差スロープ化、エレベーター設置等を行ってもらった。 試験の時、別室、時間延長、パソコン等の配慮を行ってもらった。 ページ8 学生同士の手助けがあった。 他の保護者を含め、全体の問題として対応してくれた。 生徒同士が助け合えるようグループ分けを行った。 教育事務所等、学校外からの教師の応援を入れてもらえた。 単独で通学及び学生生活に支障のある学生(高校、大学等)に対し、介助人(自己推薦)派遣を利用し卒業することができた。 <差別と思われる事例> タクシーに乗るとき、明らかに面倒くさそうに対応し、「その車いす乗せるのですか?」と聞かれた。 電車移動の際、駅員が本人ではなく、介助者に対して話しかける。 スーパーや病院、PA/SA等の障害者用駐車場が増えてきて、とても助かっている反面、利用をしたいときに一般車両が駐車していて利用できない時がある。 ファミレスで車いす単独で入店したとき、店員に「一人で来たの?」「偉いねぇ」と言われた。自分が障害を負っていなかったらこのような対応はなかったと思う。 エスカレーターと階段しかなく入店を諦めたことがあった。 スーパーの会計で、レジ担当者は介助のヘルパーに対してのみ対応し、自分が購入者であることを無視した対応をされた。 障害者や高齢者用のトイレで、トイレットペーパーの取り付け位置が高すぎて片手ではペーパーがなかなか切れず、たいへん使いにくいことがある。 ある施設で職員が、明らかに年上である通所者に、子どもに話しかけるような話し方で話しをする。また、本人と話そうとすると、職員が代わりに答えてしまう。 病院の検査台で横になって靴を脱がなければならないときに、全介助が必要だが、嫌な顔をされた。 校外活動、遠足、修学旅行に親又は親の負担による介助人の同行を参加の条件としている。 特別支援学校の生徒には受験情報を流さない。事前協議や受験上の配慮の情報がもらえない。受験に必要な授業、テストがうけられない。 「車いすだから受けられる高校はない」と言われた。 介助者のいない時間、授業や行事に参加できなかった。 遠足でひとりだけ別行動(不参加も含め)をさせられた。 ページ9 介助者のいない間は、親が付き添うように言われた。 バリアフリーやエレベーターの設置を増やしてほしい。 世の中にはいろいろな人がいるなと思うことがある。健常者ともっと触れ合ってみたいので、市主催の交流会などお互いの理解につながる機会がもっと欲しい。 混みあった電車で、必死で子どもを守ろうと押し合ったとき、後ろの男性に怒鳴られた。「障害のある子がいるんです」と言ったが、誰も知らんふりで情けない思いをした。こんな時、一言声をかけてくれる人がいれば、どんなにか助かるのにと思った。 多機能トイレを使うときの心づかい 多機能トイレは、車いす利用者のための広いスペースや、オストメイト(人工肛門等保有者)が使う専用の流しなどを備えているトイレです。 設備や条件が整っていないとトイレを利用することが困難な方がいます。優先されるべき人が使えるように、多機能トイレを利用するときは、長時間の使用は控えるなど、譲り合いの気持ちを持って利用しましょう。 (広報さやま 2017年2月号) ページ10 4内部障害 内部障害とは 体の内部に障害がある方で、身体障害者福祉法では「心臓機能」「呼吸器機能」「じん臓機能」「ぼうこう・直腸機能」「小腸機能」「肝臓機能」「ヒト免疫不全ウィルス(HIV)による免疫機能」の7種類の機能障害が定められています。 <例えばこんなことに困っています。> 外見からはわからないため、公共交通機関の優先席に座ると不審な目で見られ、ストレスを感じることがあります。 障害のある臓器だけでなく、全身状態が低下しているため、長時間の作業や重い荷物の運搬など、日頃の行動が制限されます。 「心臓機能障害」で心臓ペースメーカーなどを使用している方は、携帯電話から発せられる電磁波等の影響で心臓ペースメーカーが誤作動する恐れがあります。 「呼吸器機能障害」がある方は、タバコなどの煙などにより、大きな影響を受けることがあります。 「ぼうこう・直腸機能障害」で人工ぼうこう・人工肛門のためストマ用装具を使用されている方は、多機能トイレを利用します。一部の方の不適切な利用により、多機能トイレが利用できないときがあり、困ることがあります。 ページ11 <差別と思われる事例> 公立中学在学中、音楽の通知票に「1」がついた。医療的治療のためにのどに穴をあけており、発声や合唱・合奏の息継ぎにはハンディがある。本人の症状については事前説明を行い、教職員全体に周知されていた。授業をさぼったことはなく、定期試験もきちんと受け、提出物も漏らさず出した。にもかかわらず、「声が小さくて息継ぎがちゃんとできていないのは、本人にやる気がないからだ」と、このような評定になったらしい。担任には事情説明を求め、それでも納得がいかなかったので、抗議もしたが、結局覆らなかった。 私立高校の推薦面接で落ちた。「医療行為が必要な生徒は採らない。」という内容で、“福祉に携わる人材育成”を謳う科を設けている学校の校長から在籍の中学校へ通知してきたという。 ページ12 5知的障害 知的障害とは 何らかの理由により、知的な能力の発達に遅れが出て、日常生活や社会生活への適応に困難があることをいいます。 複雑な会話や読み書き、状況の急激な変化などへの対応が困難な場合がありますが、周囲の理解や支援によって就労等している方も多くいます。 <例えばこんなことに困っています。> 複雑な会話や抽象的な表現は理解しにくい場合があります。 読み、書き、計算などが苦手な方もいます。 初対面の方とのコミュニケーションや急激な状況変化に対応すること、自分の意見を言うことが苦手な方もいます。 きつい話し方や命令口調で話されると怒られているように感じてしまうことがあります。 就労の場では、仕事内容を理解するまでに時間がかかることもありますが、手本などの工夫やくり返し伝えることによって様々な仕事ができるようになります。 緊急時や災害時などの状況の変化を正確に判断することができず、パニックになる方もいます。 配慮について 「なぜできないのか」ではなく、具体的に示しましょう。 抽象的な表現は減らし、短い文で、順を追って具体的に伝える。 先の見通しを示すことで、わかりやすく伝わることがあります。 変化に対応することが苦手です。言葉だけでなく、絵や写真を使ってあらかじめ本人が納得するように見通しを示しましょう。 ページ13 <障害のある人への配慮の好事例> 肥満や糖尿病があり、個別の対応を求められていた。普段、利用しているコンビニの店主に許可を得て、プライベートブランドの商品の写真を撮らせてもらい、パンフレットを作成した。具体的な商品を紹介しながらの栄養指導が出来、大変喜ばれた。 コンビニでトラブルがあったとき、障害のある利用者に温かい心で接していただき、本当に感謝している 大人になるまで障害者手帳は持っていなかったが、最近療育手帳の認定を受けた。友人達にそのことを打ち明けると、今まで以上に優しく接してくれるようになった。 同じ職場に、障害のある家族(慣れている)のいる人を配置することで、職場に馴染む環境を作った。 作業しやすい様に作業手順を表にした。 勤務時間を本人の生活習慣を取り入れ変更した。 職業リハビリテーションセンターのジョブコーチを利用し、本人と会社の間での問題点や課題を見つけ、解決策を見出した。 現在の職場は障害者雇用枠での就労。今までは病気のことが理解されず苦しいことも多かったが、あらかじめ障害をオープンにして働くことで様々な配慮をいただき仕事がしやすくなった。 特別支援学級に通う流動食の子。親がその都度学校に行っていたが、看護師資格のある人が配置(教委)され、親の負担が減った。 小学生の頃、普通学級に通う子に傘を隠されたり取られたりしたことがあった時、担任の先生が意地悪をした子にきちんと話してくれたことで、意地悪をする子がいなくなった。 先生が字がきれいだと褒めてくれて硬筆展に出展してくださり、そこで賞をとるなど、本人の能力をきちんと見てくれたことが本当に、ありがたかった。本人も先生や友達に褒められ、認められてとてもうれしそうだった。先生の対応一つでその子の人生は大きく変わると思う。子どもには差別という認識はないので、学校では先生が健常の子供に、どう伝えどう対応してくれるかが優しい社会に繋がるひとつのポイントではないか。 ページ14 他の保護者を含め、全体の問題として対応してくれた。 生徒同士が助け合えるようグループ分けを行った。 教育事務所等、校外からの教師の応援を入れてくれた。 <差別と思われる事例> 見た目では知的障害があるとは全くわからないので、受診の時、母親が付き添うと「何で、いい年して母親がついてくるんだ?」といった表情をされる。その後、症状などを説明すると「自分で言えないの?」と、言われてしまうことが多い。本人は話せるが、知的障害があって、うまく説明できないことを伝えるようにしている。 肺のレントゲンを撮るときに、深呼吸がうまくできなかったようで、大きな声で叱咤されていた。検査技師の人は対象が人ではなく、物として扱っているように感じられた。 知的障害と伝えると、暴れるんじゃないか、出来ないんじゃないかとかまえられてしまうような気がして、「うちの子、知的障害者なんです」と言えず、どう説明したらいいか迷ってしまう。 風邪で時々受診している病院で、いつもと違う症状で受診した時、先生が「診察しますよ」の一言だけで、急に本人のお腹に触ろうとした。本人は、それに驚いたようで先生の手をはたいてしまい、先生がムッとした表情で「手が出るのか」と。その後の診察で先生が不快な思いをしたことが気になり、色々聞けなくなってしまった。 障害の特性で、ひとりごとや大きな声で同じ事をくり返し言ってしまうことが日頃からあるため、店主から「大きな声で騒がれると迷惑だから、来ないでくれ」と言われた。 ある店で「自閉症の方は利用できない」とスタッフから言われ、本社へメールで問い合わせると「利用可」であることが判明。後日、店長から「店側は拒否しておらず、お客様の方で辞退したと聞いている」と言われた。自ら辞退などしていない旨を伝えるが、「本社のマニュアル通りやっている」などの弁明がされた。再び本社にその旨をメールすると謝罪があったが、何の解決にも至っていない。 ページ15 ある会社で実習を何回も行うが、実際の採用はしない。 時給が他者より安い。昇給しない。ボーナスがない。 知的障害のある方などと会話するときには 話をよく聴こうとする姿勢が大切です。こちらから伝えるときは、わかりやすい言葉で話し、意見を押し付けることはやめましょう。 (広報さやま 2016年8月号) ページ16 6発達障害 発達障害とは 生まれながらの脳の一部の機能障害と考えられています。 多くは低年齢時に症状がわかりますが、大人になってからわかることもあります。 外見からはわかりにくく、また、どんな能力に障害があるか、どの程度なのかは人によって様々です。 配慮について 「なぜできないのか」ではなく、具体的に示しましょう。 抽象的な表現は減らし、短い文で順を追って具体的に伝えましょう。 先の見通しを示すことで、わかりやすく伝わることがあります。 変化に対応することが苦手です。言葉だけでなく、絵や写真を使ってあらかじめ本人が納得するように見通しを示しましょう。 <自閉症スペクトラムの特性> 自閉症、アスペルガー症候群、高機能自閉症をまとめた呼び名。 症状には多様性があり、連続体として重なり合っているという考え方からスペクトラムとしている。 相手の気持ちを理解したり、相手の立場にたって物事を考えたりすることや、周囲の人との関係を築くことが苦手。初対面の人と親しい人との区別した関わりが苦手。 他人に意思を伝えること、他人の意向を理解することが苦手。 変化に対応することが苦手。 同じ行動パターンや興味にこだわったり、物の位置や順番などの変更を極端に嫌がったりすることがある。 ページ17 <注意欠陥多動性障害(ADHD)の特性> 年齢あるいは発達に不釣合いな不注意、衝動性及び他動性を特徴としています。 うっかりして同じ間違いを繰り返してしまうことがある。 おしゃべりが止まらなかったり、待つことが苦手でうろうろしてしまうことがある。 約束や決まりごとを守ることが難しかったり、だしぬけに行動してしまうことがある。 <学習障害(LD)の特徴> 全般的な知的発達に遅れはないが、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」能力のうち、特定のものの習得と使用に著しい困難があります。 <障害のある人への配慮の好事例> 他の保護者を含め、全体の問題として対応してくれた。 生徒同士が助け合えるようグループ分けを行った。 教育事務所等、校外からの教師の応援を入れた。 同じ職場に、障害のある家族(慣れている)のいる人を配置することで、職場に馴染む環境を作った。 作業しやすい様に作業手順を表にした。 勤務時間を本人の生活習慣を取り入れ変更した。 職業リハビリテーションセンターのジョブコーチを利用し、本人と会社の間での問題点・課題を見つけ、解決策を見出した。 「評価できない」という理由で、保護者への相談もなく文書による状況報告の通知表をもらった。内容はほぼ「できない」「問題行動」であった。「評価できない」というならば、全部「がんばりましょう」で良い、と伝えたところ、2学期からは同じ通知表になった。全部「がんばりましょう」かと思ったら、いくつか「できました」に○が・・・先生の視点が「できない事」から「できる事」へ変わった。 ページ18 <差別と思われる事例> 普通学級の授業を抜けて通級指導教室に行くときに、「がい者(障害者という意味)だから」とか、「できないから」とかという言葉を言われたり、扱いを受けた。 学校で、子どもたち、その親たちになぜ必要なのか、なぜあるのか、わかりやすい指導があるとそのような発想にはならないのでは?と思う。正しい理解をしていれば、本人が困っているときに、手を差し伸べてくれる友人ができるかもしれないと思う。 小学校プール授業で、ひとりだけ違う色の帽子の着用と保護者も一緒にプールに入るように言われた。ひとりだけ別の対応をされるのは他の子から見ても不自然。・・・等の理由を話し、断った。 発達障害通常学級在籍(2年半前)クラス担任から再三の特別支援学級への進めあり。現状を希望し続けたところ、進級条件として、「投薬」を言われた。 自分が知的だって言われたとき、悔しかった。 ページ19 発達に心配を感じたら 発達障害には早期発見と切れ目のない支援が重要であるとされています。早い段階で子どもの状態を把握し、支援体制を構築することで、ライフステージごとにゼロからの支援とならないようにすることができます。また、周囲が本人のすがたを理解し、適切な接し方を続けることで、将来の自立をめざす本人の自信につなげることができます。 埼玉県では発達障害のある方の支援に関して、ライフステージごとに切れ目のない支援を実現させるために、「サポート手帳」を作成し、活用を促しています。 サポート手帳とは、学校に進学するときなど、特に連携が重要とされるタイミングで、医療・福祉・教育等の関係機関が支援内容等を共有し、一貫した支援体制を構築するためのものです。 保護者や本人がプロフィールや支援状況等を記録し、必要に応じて関係機関に提示することで支援者一同が共通の認識で関わることができるようになります。 ページ20 7精神障害 精神障害とは 精神疾患のため、日常生活や社会生活がしづらくなることを言います。 (心身症、神経症、うつ病、躁うつ病、統合失調症、てんかん、依存症、心的外傷性ストレス障害等) 脳の機能障害が原因で、誰でもなる可能性がある病気です。最も多くの人がかかっている統合失調症は、100人に1人くらいの割合と言われています。 多くの場合、服薬で症状が安定し、更にカウンセリング等によって、回復を早め、社会復帰も可能となります。症状に気付いたら、一刻も早く受診することが早期回復につながります。 <例えばこんなことに困っています。> 精神疾患についての誤解や偏見が受診や相談への妨げになっていることもあります。 そっと見守ってほしい時や話しを聞いてほしい時もあります。無理な励ましはストレスになることもあります。 無気力になったり、集中力や持続力が低下したり、落ち込んだり、疲れや眠気を感じたり、ひきこもりがちになるなど日常生活や社会生活のしづらさがあります。 精神疾患は、国が5大疾患と認定しているほど、多くの人がかかっている病気です。地域の人が、病気や障害について正しく理解することが大切です。 特別扱いせずに自然体で接することが望まれます。 できるだけ早く、医療機関や相談機関、当事者や家族の会につながることが回復につながります。 ページ21 <障害のある人への配慮の好事例> 障害を職場に開示して週5日、1日4時間程度アルバイトをしている。元々、非開示で就労をしようと思っていたのだが、就業時間等相談に乗れることを先方から持ちかけられた。特に就労支援は関わってはいない。 その後も、職場内での対人関係等で勤務できなくなったときに積極的に相談に乗ってくれたり、まとまった期間休職をすることを認めてくれたりと、本人の体調を考慮して頂けた。 高校の受験の時の面接で筆談をしてくれた。 近所のおばあさんが親切にしてくださる。 分かりやすく紙に持ち物などを書いて説明してもらった。 障害の種別は違っても、障害者(及びその家族)の方々と少し交流が出来て(少しの会話だけでも)周りが見えるようになった。 目的地まで聞いても分からなかったとき、駅員、店員の方に分かりやすい所まで案内してもらった。 障害の理解、配慮、対応などをしてくれるところが増えてきている。(施設、お店など)良くしてもらったり、体調など気にかけてくれる。 引きこもり他、絶望の中にいたが、福祉施設、作業所や関係機関があることで世界が開けた。(社会に戻れた。同じ病気や悩みを抱える人と仲良くなったり、コミュニケーションができるようになったりとたくさんのプラスが感じ取れる。)本当に感謝している。 <差別と思われる事例> 内科を受診したとき、病状を聞いてもらえず、何も言ってないのに「他の人もがまんしているのだから」と言われて、診察なしで精神科を紹介されるだけだった。 「精神障害がある」と言うと、全ての障害者が「危険な行動や困惑する言動をとる」と思っている方がいる。(障害者だから言っても無駄ですよ、みたいに言われてしまう。) 自動車運転免許更新のときに医師への診断書が必要で、高額のお金がかかった。 ページ22 以前勤めていた会社の先輩にお前なんか早く死んじまえと言われた。 仕事を探しているときに、登録するのにお薬手帳や病状の他に、発症した当時の詳しい内容や心情などを聞かれ、辛かったし、周りにいる人たちに聞かれたりしたら嫌だったのでもう少し配慮して欲しかった。主治医の意見書が必要と言われ、信用してもらえなかった。そのうえ、仕事の紹介時に意見書を再提出してもらうことがあると言われ、利用自体を考えてしまった。 会社に勤めていたとき、「病状が悪化している時は会社にくるな」という発言を影に隠れて言っている人がいた。 自分は福祉施設やデイケア等に行きたくないのに、家族は家から出て行って欲しいために無理やり行かせようとする。 病気に対する理解度が低い気がする。見た目で判断しづらいので、対応が厳しい。サボっているわけでも、手を抜いているわけでもないことをわかって欲しい。 一人暮らし等物件を探す際、精神障害を抱えていることを不動産屋に話すと、「大家さんからNGが出て・・・」と詳細を聞いてもらえず、契約を断られてしまうことがある。 入院中、看護師や看護助手の一部の人が明らかに入院患者をバカにした態度をとったり、からかっている場面を見たことがある。 職員の多数が患者に対して、威圧的な態度をとっていた。頼んだことをやってくれないことや説明がないこともよくあった。 精神障害者がいる家族にとっては、本人ばかりでなく幾多の困難の中で生活している。 ある市の審議会の事務局の課長に「普通じゃないねえ。」と言われた。「普通じゃない」というのは漠然としているが、いやな言葉だった。 ある市の教育委員会の人が、障害者の声を「聴いて」とか「尊重して」と言わず、「聴取して」という言葉にこだわって使っていたが、「聴取」という言葉は適切でないと感じた。 悩んでいると「病んでいる」と言われたり、話しもきちんと聞かず、「取りつかれている」などの表現を軽々しく使われ、嫌な思いをした。 仲間が激しい口調で責められたり、怒られているのを目の当たりにしていると、ストレスを感じやすい。 ページ23 心に病をかかえている方と接するときには うつ病や気分障害、統合失調症は、脳の機能障害が原因で、誰でもなる可能性があります。これらは、薬の服用や、環境が安定することにより、回復していきます。 励ましやアドバイスが、過剰なストレスになることもありますので、自然体で接し、悩みや不安を打ち明けられたら、じっくり話を聞いてください。また、通院や服薬がしやすいようなサポートも大切です (広報さやま 2017年1月号) ページ24 8難病 難病とは 原因が不明で、治療が極めて困難で、後遺症を残す恐れもあり、生活面に長期に支障をきたす疾病です。神経筋疾病、骨関節疾病、感覚器疾病など様々な疾病により多彩な障害が生じます。 症状の変化が毎日ある、日によって変化が大きい、症状が見えにくい、進行性の症状を有する、大きな周期で良くなったり、悪くなったりという特有な症状がみられます。 常に医療的対応を必要とすることが多いため留意が必要です。 <例えばこんなことに困っています。> 外見ではわからない疾病の方もいます。電車やバスの優先席に座っているとき、周囲の理解が得られないなど、心理的ストレスを受けやすい状況にあります。 それぞれの難病の特性が異なります。その特性に合わせた対応が必要です。一日の中でも体調の変動があることもあります。 進行する場合が多く、病態、障害が変化するため、介助等も変わってきます。 排泄の問題、疲れやすさ、状態の変動などがあります。 体温調節が難しいことがあるため、換気やエアコンなどの適切な利用が必要となります。 <障害のある人への配慮の好事例> 病院の対応(入院時)には満足している部分が多い。 学生生活がスムーズに送れるように、トイレの改造(洗浄器付トイレ、車いすスペース)、介助人の待機室、ホームルームの1階(3年間)、段差スロープ化、エレベーター設置等を行ってもらった。 ページ25 試験で別室、時間延長、パソコン等の配慮を行ってもらった。 学生同士の手助けがあった。 他の保護者を含め、全体の問題として対応してくれた。 生徒同士が助け合えるようグループ分けを行った。 教育事務所等、校外からの教師の応援を入れてくれた。 単独で通学及び学生生活に支障のある学生(高校、大学等)に対し、介助人(自己推薦)を派遣することによって卒業することができた。 <差別と思われる事例> 外出時の周りの目(奇異な目)に違和感がある。 車いすでの移動時に違和感がある。(手伝ってほしい、と思う気持ちと、手伝った方がいいかな、と思われている雰囲気) 障害のない方(家族や友人)が、何気なく言った一言(頑張ってね、など)に傷ついた。 車いす利用者が使うトイレで、高さが合わない便座、手の届かない手洗い器など何を基準に設置しているのか疑問だ。 就学時、本人や保護者の意思がはっきりしているにもかかわらず、判定通りの選択がされるまで何度でも保護者を呼び出したり、強制的に決定をせまる。 最終的な決定権は市教育委員会にあるが、選択肢として通常学級を提示しない。 入学後も、校内において、担任や主任他の先生から特別支援学級や特別支援学校への転籍をすすめられる。 ページ26 障害者に関するマークについて、参考に掲載してあります。