狭山市納税貯蓄組合長賞

西武学園文理高等学校　二年　小澤　七海

私が小さい頃、母にこんなことを聞いた。
「なんで税金を払わないといけないの。」
母は、もし税金がなくなったらどうなってしまうのか教えてくれた。道路は整備されず、ゴミは誰も回収してくれない。保育園も行けなくなってしまう。わかりやすく説明してくれたため、税金のおかげで今の生活が成り立っていると、幼い私でも理解する事が出来た。
私には八歳下の妹がいる。私がちょうど中学校に入学したあたりから妹が通った保育園は、小規模保育施設だった。小規模保育施設では、〇歳から二歳児までしか預けることができない。あと数ヶ月で、妹が三歳になるというとき、
「妹が保育園に入れなかった。誰が妹の面倒をみよう。」
と、共働きの両親は頭を抱えていた。保育園に入れないという事態が生じることを、その時は知らなかった。妹のような子どもを待機児童と言うらしい。私の住む埼玉県では千人を超える保育所等待機児童がいて、とても驚いた。また、他に目に入ったのは関連ワードにある保育士不足だった。小学校では保育士になるのが夢という人もいたのに、と不思議に思った。結局、いくら探しても入園できる保育施設は見つからず、母が仕事を辞めて妹をみることになった。
最近のニュースでは、不適切保育が取り上げられる事も多く、保育士に対する批判の声も大きい。ただ、私は不適切保育に保育士不足が関係するのではないかと考えた。
人間関係や労働時間もあるが、私が考える保育士不足の一番の原因は給与の低さである。令和二年賃金構造基本統計調査によると、保育士の初任給の平均月給はおよそ二十万円。ここから保険料や税金が引かれる。今、保育士一人に対して園児を平均六人見なければならないという現状があり、精神的にも身体的にも負担が大きいことが分かる。不適切保育が良いという訳ではないが、苦しい状況にも関わらず少ない給与で追い詰められ、園児に当たってしまうのも理解できる私がいた。
自治体が運営する保育施設で勤務する保育士は、公務員保育士と呼ばれる。つまり、国民の税金から給与が支払われる。防衛費増額のための増税、相続税増税の検討。私は知らないことの方が多いから、増税の詳しい理由はわからない。けれど、それより先にすることがあるのではないかと思った。子どもが成長するにあたり不可欠な保育士や、それ以外にも教職員など、負荷が大きい公務員への給与を増やす事が必要ではないだろうか。
幼い頃に知った、税金のこと。税金は私達の生活を支えている。しかし、物価高が続く世の中で、税金が私達の暮らしを苦しめているのも事実ではないか。私は来年成人し、一人の大人として生きることになる。日本の現状を知り、今以上に税金への理解を深めた上で、自分の意見を持ち、発信していきたい。