山王小学校のすぐそばの辻に、古いお地蔵さまが、ぽつんと立っています。このお地蔵さまは『化け地蔵』といわれ、こういう昔ばなしが伝わっています。
むかしむかしのある夜のこと、一人の旅人が、この辻を通りかかりました。その夜は、あたり一面スミを塗ったような闇夜でしたので、手さぐりで歩いていると、遠くに小さなあかりが見えてきました。
これは助かったと旅人が急いでかけよると、それはなんと丸い大きな頭をした化け物で、あかりに見えたものは、ギラギラ光る目だまと大きな口でした。
旅人は、ビックリぎょう天。腰をぬかさんばかりにおどろいて、一もくさんに逃げだしました。
そして、やっとの思いでかけ込んだ農家でことのしだいを話しました。それを聞いたお農家さんは「化け物が出るといううわさは、ついぞ聞いたことがねえけど、まさかあのお地蔵さまがばけるはずはなかんべえ」といいました。
ふしぎに思ったお農家さんは、次の朝その場所へ行ってみると、なんと化け物の正体は、スイカぢょうちんでした。こりゃあ、きっと若いもんが人をおどかすためにしたいたずらだんべえ。とお農家さんは思いました。
しかし、ゆうべのことはすでに旅人によって『化け地蔵』としてのうわさが広められてしまいました。
また、このお地蔵さまにはちょっと変わったいい伝えがあります。それは、いつも荒なわでしばられていたことです。
これは、人が願いごとをたのむ時に必ず荒なわで、グルグル巻きにしばり、その願いがかなえられた時になわをほどいてやるのだそうです。
こういったならわしを見た人が、あれはお地蔵さまが化けるから、荒なわでしばっているのだと伝えたということも考えられます。
ともかくこのあたりは、昼なお暗いケヤキの生い茂った林だったそうです。
化け地蔵遠景
入曽の化け地蔵
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