むかしむかし、堀兼地区の加佐志という所に、小さなお地蔵さまがありました。
村の古老(お年よりのこと)たちは「このお地蔵さまは、たいそう古くから、耳だれにごりやくがある」と伝えていました。
そして、耳の悪い人たちが願かけにくる時には、かならずお酒を入れた竹筒をお地蔵さまにぶらさげて、「お地蔵さま、どうぞ耳だれをなおしてくだせえ。なおしてくだされば、この酒を倍にしてお礼にまいります」と言って一心にお願いして、前の人がぶらさげていった竹筒のお酒を持ち帰りました。
このお地蔵さまのごりやくは、たいそう評判が高く、近郷近在からたくさんの人々がおまいりにやってきていました。そして、いつでもお酒の入った竹筒が、たくさんぶらさがっていました。
むかしは、毎年四月と八月の二十四日が、このお地蔵さまのえん日でその日は、おまいりの人も多く露店まで出ていたそうです。
現在このお地蔵さまは、加佐志の墓地の入口にひっそりと立っています。