第66回狭山市成人式における、市長式辞を掲載しています。
市長式辞
令和2年の新春を迎え、本日ここに第66回狭山市成人式を挙行するにあたり、式辞を申し上げます。まずもって、加賀谷市議会議長を始め、ご来賓の皆様方には、公私ともご多用のところ、ご臨席をいただき、主催者として厚く御礼申し上げます。
本日、晴れて成人式を迎えられました1,412名の皆さん、誠におめでとうございます。皆さんの新しい門出をお祝いするとともに、今日まで愛情を込めて育ててこられましたご両親はじめご家族の皆様方、そして熱心にご指導くださいました諸先生方に対しましても、心からお慶びを申し上げたいと存じます。
皆さんは子どもの頃、多くの人に見守られていたと思います。私が通っていた堀兼小学校の正門の脇にも、毎日、決まった場所で、立って見守ってくれた人がいました。その人の名前を二宮金次郎と言います。誰もが名前を知っている一方で、何を為した人なのか分からない人も多いと聞きます。これから名実ともに新しい時代を歩む皆さんに、彼の人生から導かれる3つの成功法則をお話しいたします。
今から200年以上も前の江戸時代、現在の小田原付近の比較的裕福な農家に彼は生を受けました。5歳の時、近くを流れる川が大氾濫し、家や田畑、殆どすべての財産を失います。そして、復興復旧の道半ば、彼が中学生の時には相次いで両親が他界してしまいます。近年、我が国で頻発する自然災害と同様、災害は多くの人々の人生をいとも簡単に変えてしまいます。
まさに苦難の少年時代、これこそが彼の人生のスタートを表す言葉です。しかし、彼には自分の置かれた境遇を恨む時間はありませんでした。1日も早く、目の前の環境を改善するため、昼夜を問わず必死に働き、そして歩いている時間も無駄にすることなく、勉強し続けたと伝えられています。
二宮金次郎 成功法則の1つ目
「今しかできないことに集中しろ!決して時間を無駄にしてはいけない」
テレビやスマートフォンの無い時代、本は最高のメディアでした。しかし、当時は「農民に勉強は必要ない」が常識でした。夜、火をともしながら読書をする金次郎を「油がもったいない」「勉強は必要ない」と親戚は咎めていたようです。しかし、その批判と常識をものともせず、彼は学び続けます。本から得た最新の知識と論語などの人生における普遍的な法則は、後に目覚ましい活躍をする礎となりました。成人となった彼は困った人がいれば、資金援助をし、生活再建の手助けをしました。小田原藩のとある家老の家を見事な手法で財政再建させることにも成功します。厳しい身分制度の中で一介の農民が当時の支配階級である武士に代わって仕事をすることなど考えられないことでした。間違いなく、多くの反発もあったでしょう。しかし、今にも通じる金融の知識、当時の主要産業である農業の豊富な専門知識こそがそれを可能にしました。常識の塊である「今」を疑い、真心をもって、努力し続けた彼は生涯にわたって約600以上もの困窮する村と人々の生活を再建させることに成功します。苦難の末に、今で言う「地方創生」を成し遂げた、日本を代表する偉人です。ここから見えてくる二宮金次郎 成功法則の2つ目
「自分の可能性を広げろ!多くの人が共感する新たな常識を作らなくてはならない」
チャップリンが残した名言の中に「人生に必要なものは勇気と想像力。それとほんの少しのお金」というものがありますが、金次郎には残念ながら、家や財産もなかった。故にチャンスは、自分で発見するしかありませんでした。ある時、彼は荒れ地に稲の苗が捨てられていることに気づきます。田植えが終わり、必要のないものとして捨ててあったものです。彼はそれを拾い集め、田んぼを作り、植えたところ、秋には一俵もの収穫を得ることとなりました。金次郎が人生の反転攻勢に出るチャンスを得た瞬間です。この経験は後に「積小為大」、つまり小さなことでも精を出し勤めていけば、どんな事でも成し遂げることができるという精神を生み出しました。誰も見向きもしない、無価値同様の捨てられていた苗に、大きなチャンスを見出したのは金次郎一人であったろうと思います。
成功法則の3つ目
この事に似た事例をもう一つ紹介します。今から80年ほど前のカリフォルニアで、ある兄弟がレストランを開店させました。マクドナルドというこのレストランの仕組みは、当時、画期的で素晴らしいものでしたが、創業者の兄弟はこのことを理解していませんでした。この時、ミルクシェイク用のミキサーをセールスに来たレイ・クロックという人物はビジネスの可能性にいち早く気づき、この兄弟から店舗運営の仕組みを買い取り、瞬く間に世界中に店舗を広めていきます。現在のマクドナルドはこのレイ・クロックという人物によって創業されたと言っても過言ではありません。彼の自伝のタイトルはこういうものです「成功はごみ箱の中に」。皆さんも一読することをお勧めします。
令和の時代を迎えた今、江戸時代を生きた二宮金次郎の話かと思う人も多いかと思いますが、これから、皆さんが生きていく環境は大きく変わっていきます。そんな時代だからこそ、埋もれているものの中に、忘れ去られようとしているものの中に、未だ見出していない価値を見つけようとする努力は、皆さんが将来を歩む上で決定的な役割を果たすことになります。それはつまり、自分の可能性とそこに潜む希望の力を見いだせということです。
まさに、昨年のラグビーワールドカップで日本代表が私達に見せてくれました。皆さんが生まれた、ほんの20年前には世界の強豪国相手に一勝も挙げることが出来なかっただけでなく、史上最大の点差で敗北を喫した日本代表でした。けれど、彼らはあきらめなかった。そして、前に進むことを彼らは選んだのです。何人もの伝説の監督や世界的なプレーヤーが悔し涙を流し、絶望的な結果に直面してもなお、彼らは自分たちの持つ可能性と自分たちの後を走ってくる世代にボールをつないできました。結果はご存知のとおり、世界中の人々に「もう奇跡とは言わせない」結果を示してくれました。
今、この場で私たちがパスを投げるべき相手、私たちの希望の力とはすなわち、新成人の皆さんです。
時代を問わず、私たちは常に似通った困難に直面します。それは皆さんがどんな職業につき、どんな社会的地位を得たとしても関係ありません。その中で希望を抱き、皆さんの人生を価値あるものへと導く教訓は時代を経ても変わるものではないからです。
繰り返します。今しかできないことに集中する。自分の可能性を広げる。常にチャンスを探し続ける。皆さんの夢はきっと叶うはずです。自分自身にもっと期待をして、この世の中をもっと面白くしてくれることを心から期待します。
新成人の皆様の前途がすばらしいものとなることを心からお祈り申し上げ、お祝いの言葉といたします。
令和2年1月12日
狭山市長 小谷野 剛
このページに関するお問い合わせは
生涯学習部 社会教育課
狭山市入間川1丁目23番5号
電話:04-2946-8594
FAX:04-2954-8671
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