柏原の下宿に「甲斐屋坂」と呼ばれている、細く、急な坂道があります。
この坂道には、こんなお話が伝えられています。
昔々、甲斐の国(現在の山梨県)から戦にやぶれた落人がこのあたりにやって来て、田畑を耕し、道を切り開き、いつしかこの地に住みつくようになりました。
そうしたことから、人々は、この地にある坂道を「甲斐屋坂」と呼んだそうです。また、柏原から甲斐の国まで通じている坂道ということからも、この名前がついたといわれています。
「甲斐屋坂」の下あたりには、以前、石のお地蔵さんがたっておりました。これは「耳だれ地蔵さん」と呼ばれ、耳の病によく効くお地蔵さんだったそうです。そして、このお地蔵さんに願掛けに訪れた人々は、必ずタカズッポ(竹筒)を供えていったため、その量の多さにお地蔵さんが見えなくなるほどだったそうです。このお地蔵さんは、現在、円光寺に安置されているそうです。
柏原には、このほかにも、信濃坂や影隠地蔵(奥州道交差点付近)など、狭山の地名ではめずらしい名前の坂道やお地蔵さんが残っています。
(広報さやま平成21年10月10日号より)
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