同和問題
私たちは、一人ひとりが人権を尊重され、幸せに生きる権利を持っています。しかし、同和問題は、誰にでも保障されているはずの基本的人権が侵害されるという、わが国固有の重大な社会問題なのです。
同和問題は、封建時代の支配者が民衆を支配する必要から、政治の仕組みとして確立した部落差別、身分的差別に起因するものであり、本人の責任とは何の関係もなしに差別される、明らかな人権問題です。
明治4年(1871年)に「身分解放令」が出され、身分制度は廃止となり、戦後には国民すべてに基本的人権を保障する「日本国憲法」も施行されました。そして、問題の早期解決をめざして「同和対策事業特別措置法」などの特別立法に基づいてさまざまな施策が講じられました。その結果、生活環境の改善をはじめとするハード面の格差は大きく改善されたものの、今日でも結婚や就職等の差別事象や差別落書き事件が発生するなど、差別意識の解消には依然として課題が残っています。また、最近では、インターネットを使った露骨な差別事象なども発生しています。
このようなことから、平成28年(2016年)12月、部落差別解消を目的とした「部落差別解消法」が施行されました。
同和問題を根本から解決するために、法の主旨に鑑み、同和問題をはじめとする人権教育と啓発を今後一層推進し、「差別をしない、させない、許さない」という意識を一人ひとりが態度や行動に表し、社会に残るさまざまな差別や不合理な偏見を解消していきましょう。
また、令和4年(2022年)7月には、部落差別のない社会の実現を目指して「埼玉県部落差別の解消の推進に関する条例」が施行されました。
この条例は、部落差別の禁止規定を設けるとともに、同和問題について正しい認識を一人ひとりが持つことによって、部落差別をなくしていくことを目的としています。
女性問題
男女平等の理念は「日本国憲法」に明記されており、法制上も「男女雇用機会均等法」などによって、男女平等の原則が確立されています。
しかし、現実には今なお、「男は仕事、女は家庭」といった男女の役割を固定的にとらえる意識が、社会一般に残っています。そして、このことがさまざまな男女差別を生む要因となっており、男女の実質的な平等が実現されているとは言い難い状況にあります。
この問題の背景には、長年、女性の社会進出が進まなかったという状況があることから、最近では、育児休業制度の充実や介護休業制度の導入、学校における家庭科の男女共修など、さまざまな面で制度の見直しが進められています。しかし、何よりも、一人ひとりが自らのライフスタイルを見つめ直し、人為的につくられた「男らしさ」、「女らしさ」といった「性差」にとらわれずに多様な人生を選択できる社会を実現するため、努力していくことが必要です。
また、配偶者・パートナー等からの暴力や職場などにおけるセクシュアルハラスメント、性犯罪などの「女性に対する暴力」の問題も、重大な人権侵害です。これらの問題は、女性が被害を訴えにくいことから問題が潜在化する傾向があり、被害を未然に防ぐためにも周囲の人の理解と協力が必要です。
こうした中、平成11年(1999年)6月23日には、男女共同参画社会の形成を総合的かつ計画的に推進することを目的とする「男女共同参画社会基本法」が施行され、男女共同参画社会の形成に向けて取り組みが進められています。
子どもの問題
子どもの人権問題には、虐待やいじめ、体罰・不登校などがあります。
これらの問題は、家庭内の不和、経済的な問題、親子関係、家庭の社会からの孤立など家庭や学校・社会のさまざまな要因が重なって生じています。
子どもをめぐる人権問題は、周囲の目につきにくいところで生じていることが多く、また子ども自身も被害を外に訴えるだけの力が未熟である場合が少なくないので、周囲の大人が十分な配慮をする必要があります。
子どもが安心して暮らし、健全な成長を歩みながら、社会の一員として自立していくためには、親、大人、そして社会全体が子どもを温かく見守り、一人ひとりの人格や個性を尊重することが、子どもの人権問題を考えるうえで大切なことです。
高齢者問題
わが国では、平均寿命の大幅な伸びや少子化などを背景として、世界に例をみないほどのスピードで高齢化が進んでいます。2030年には3人に1人が高齢者という超高齢社会になるといわれています。こうした中、疾病等のために介護を必要としている高齢者に対して介護者が肉体的・心理的虐待を加える、高齢者の預貯金などを家族等が無断で名義変更をしてしまうなどの虐待、また、個人の能力に関係なく高齢者であるという理由だけで採用されないなどの就業差別といった高齢者に対する人権問題が大きな社会問題となりつつあります。
核家族化などにより高齢者との関わりが減ってきている中で、地域などにおいて高齢者と積極的に交流し、お互いを理解し認め合う関係づくりを進めることが必要となります。
また、高齢者の豊かな経験や知識が生かされ、高齢者が自らの意思に基づき地域の中で積極的に役割を果たしていける社会、また、たとえ認知症になったとしても、権利を擁護し、尊厳を持ち可能な限り人としての意思を尊重される社会を構築していくことが求められます。
障害のある人の問題
すべての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現のために、ライフステージのすべての段階において条件を整える必要があります。
このため、障害を理由とする「不当な差別的取扱い」を禁止するとともに、社会の中のバリアを取り除くことへの「合理的配慮の提供」を求める、「障害者差別解消法」が平成28年(2016年)4月に施行されました。
障害のある人と障害のない人が共に生きる社会こそノーマルな社会であるというノーマライゼーションの理念を社会に行き渡らせ、障害のある人の「完全参加と平等」の実現を目指していきましょう。
外国人問題
情報通信機能の発達などを背景とした国際化が進む中で、狭山市においても外国の姉妹都市である大韓民国・統營市、アメリカ合衆国・ワージントン市並びに友好交流都市の中華人民共和国・杭州市を中心とした文化・スポーツ・教育・産業等の多岐にわたった分野での交流や狭山市国際交流協会と連携した地域の外国人との交流を通じて、外国との関わりがますます増大しています。
その中で、言語・宗教・習慣等の違いから、外国人と市民との間で人権を含めたさまざまな誤解が生じる場合もあります。
言葉や考え方の違いからくる誤解を解消するため、外国の文化を理解するだけでなく日本の文化に触れる機会を積極的に提供し、お互いを理解して尊重することが大切です。
そして、外国人の持つ文化や多様性を広く受け入れ、外国人にも暮らしやすい街づくりを進めるとともに、これからの国際社会の一員として、市民一人ひとりが世界の人々と積極的に交流を深め、国際感覚の醸成を図ることが望まれます。
HIV感染者等の問題
医学的に見て不正確な知識や思い込みによる過度の危機意識の結果、感染症患者に対する偏見や差別意識が生まれています。患者や家族に対する偏見や差別意識を解消していくことが重要です。
犯罪被害者やその家族の問題
犯罪被害者やその家族、少年事件などの加害者本人へのマスメディアの行き過ぎた取材や報道によるプライバシーの侵害等が指摘されています。特に、犯罪被害者やその家族は、直接的な被害のみならず、これに付随して精神的、経済的被害等さまざまな被害を受けている場合が多く、マスメディアの行き過ぎた取材や報道などによって人権が侵害される場合もあります。犯罪の被害にあった人たちの置かれている状況を理解し、支援に協力していくことが必要です。
アイヌの人々の問題
アイヌ民族であることを理由として、アイヌの人々は結婚や就職などでさまざまな差別を受け、経済的にも困難な状況に置かれてきました。また、独自の言語を話せる人も極めて少数となり、アイヌ民族独自の文化が失われつつあります。アイヌの人々の民族としての歴史、文化、伝統及び現状についての理解と認識を深め、その人権を尊重していくことが重要です。
インターネットによる人権侵害
インターネットにはコミュニケーションの輪を広げるという便利な機能がある一方で、自分の氏名や顔を簡単には知られずに発言することが可能なことから、匿名性を悪用して安易に他人の個人情報を流したり、誹謗中傷や無責任なうわさの流布といった人権侵害の問題が発生しています。
インターネットでの人権侵害を防ぐには、インターネット利用上のルールやモラルを守るとともに、常に相手の人権を尊重するという意識をもつことが必要です。すなわち、インターネットの画面の向こうには、自分と同じように人権のある他者の存在ということを忘れずにコミュニケーションするということが求められます。
北朝鮮当局による拉致問題
1970年代から1980年代にかけて、多くの日本人が不自然な形でその消息を絶ちました。これらの事件の多くは北朝鮮による拉致の疑いが持たれています。平成14年(2002)年9月、北朝鮮は日本人拉致を初めて認め、同年10月に5名の拉致被害者が帰国しましたが、他の被害者については、いまだに北朝鮮から安否に関する納得のいく説明はありません。残された被害者たちは、現在も北朝鮮に囚われたままの状態で救出を待っています。
拉致問題の解決には、被害者やその家族の早期帰国を願う思いを忘れることなく、解決を望む国民の強い意志を北朝鮮に伝えていくことが大切です。
災害時における人権への配慮
平成23(2011年)年3月11日に発生した東日本大震災は、大津波の発生により東北地方と関東地方に甚大な被害をもたらしました。また、地震と津波にともない発生した福島第一原発の事故により今も多くの人々が避難生活を余儀なくされています。避難所等における生活の肉体・精神的疲労が原因による震災関連で亡くなられた人は平成26(2014年)年3月現在、3,089名に上ります。また、原発事故により放出された放射性物質は、福島県をはじめ東日本の広範囲に拡散して被害をもたらすとともに、今も放射線被ばくについての風評被害が問題になっています。
社会的に弱い立場にある人々が避難の過程でより多くの苦痛を強いられ、より一層厳しい状況に置かれ犠牲も多くなるということを回避するための配慮が必要です。また、人権に配慮しながらの支援や復興に従事することが切に求められます。
性的少数者(性的マイノリティ・LGBT)の問題
すべての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現のために、ライフステージのすべての段階において条件を整える必要があります。
個人の性を考えるとき、次の3つの観点を持つことが必要とされています。
(1)身体の性別⇒生物学的に男か女かを指すもので、「生物学的性別」とも言います。
(2)性自認(Gender Identity)⇒本人が自認する性別のことで、「心の性」とも言います。
(3)性的指向(Sexual Orientation)⇒恋愛感情や性的欲望がどの性別に向かっているかを指します。
多くの人(マジョリティ)は、身体の性別、性自認が一致し、性的指向が異性に向かっていますが、このような状態でない人も一定数存在します。このような人のことを性的少数者(性的マイノリティ・LGBT)」(※1)と言います。これらの人たちは自認する性別に関して、「身体的には男(女)だが、自分(の心)は女(男)」あるいは「自分は男でも女でもない、性別を意識していない」と考える人がおり、自分の身体や戸籍上の性別に違和感を持ち、それを受け入れられない人がいます。
また、性的指向に関しても、同性愛や両性愛の指向を持つ人がいます。
性的少数者は、性自認や性的指向を理由に社会のさまざまな場面で偏見や差別を受けることがあるため、多くはさまざまな悩みや生活上の困難を抱えています。
個人の性自認や性的指向はさまざまで、それを認め合い、正しい理解を深め、偏見や差別を解消することが必要です。
(※1) レズビアン(Lesbian:女性同性愛者)、ゲイ(Gay:男性同性愛者)、バイセクシュアル(Bisexual:両性愛者)、トランスジェンダー(Transgender:身体や戸籍上の性別に対し違和感を持ち、異なる性別を望む人)の頭文字をとった言葉。トランスジェンダーの中で医学的に病気と診断された場合が「性同一性障害」です。 インターセックス(Intersex:性分化疾患=先天的に身体の性別の特徴が男女何れかに区別できない人)を含めて「LGBTI」とする場合がある。
その他の人権問題
1.刑を終えて出所した人
刑を終えて出所した人やその家族に対する地域社会からの偏見や就労の問題があります。真に更生し、社会の一員として円滑な生活を営むには、地域社会や周囲の人々の理解と協力が欠かせないことから、偏見や差別意識の解消が重要です。
2.ホームレス
野宿生活者、その他安定した居住の場所を有しない人、いわゆるホームレスは、その自立を妨げるさまざまな要因があり、住居の確保が困難であったり暴行を受けるなどの問題が生じています。偏見や差別意識の解消が重要です。
関連情報
さまざまな人権「みんなの人権 人権ってなんだろう?」(外部サイト)
埼玉県の関連情報はこちらから
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