むかしむかし、綿貫家という、それはそれは大そうな大金持ちが住んでいました。
俗に西の鴻池、東の綿貫といわれるほどで、関西で有名な大金持ちの鴻池家とならんでのお大尽だったそうです。そして、綿貫家は江戸にたくさんのお店や蔵を持っていて、綿貫家の人が入間川から江戸のお店に行く途中の土地は、全部綿貫家の土地だったそうです。
ある夏の日の夕方、綿貫家の近くのお宮で盛大なおまつりが行われました。おまつりには、近郷近在から大ぜいの人々が集まって、大そうなにぎわいでした。
ピーヒャラテンテン、ピーヒャラテンテンいよいよおまつりが真最中になろうとした時、西の方からまっ黒い雲がモックモックとわいてきて、みるまにザーッと激しい夕立になってしまいました。
大ぜいの人々は、われ先に綿貫家へ傘をかりにかけ込みました。「それはお困りでしょう。さあどうぞお持ちください」綿貫家の人たちは、だれにも次から次へと傘を渡しました。
「こりゃあありがてえこんだ。おらにもかしてくだせえ。おらにも、あたしにも・・・」あとからあとから人々は傘をかりにやってきました。しかし、綿貫家の傘はどんどん出てきます。「さあさ、どうぞどうぞ。どなたさまも傘をどうぞ」
あまりに傘が限りなく出てくるので、一人の旅人が綿貫家の番頭さんにたずねました。「さすがはお大尽だ。で、一体何本ぐれえの傘があるのかね」
すると番頭さんはニコニコしながら答えました。「はい、まだ数えたことはありませんが、傘ならまだむこうの倉三つにいっぱいありますから、どうぞご心配なく」
人々は、いまさらながら綿貫家のお大尽ぶりに、きもをつぶしたということです。
このページに関するお問い合わせは
企画財政部 広報課
狭山市入間川1丁目23番5号
電話:04-2935-3765
FAX:04-2954-6262
この情報は役に立ちましたか?
お寄せいただいた評価はサイト運営の参考といたします。