たいていの農家では屋敷神として稲荷さまを祭っています。稲荷さまのおつかいのキツネどのがまだまだいばっていたころのお話です。
むかし下奥富あたりが、まだ家も少なく、雑木林と草っぱらが広がりさびしかった頃のことです。
ある日、大芦に住むとうべえさんが青柳の方へお茶っぱを買いに出かけて行きました。話がはずみ、帰る頃にはすっかり日も暮れ、空には星がチカチカしていました。ちょうど五反田あたりを通りかかった時のことです。突然「コーン、コーン!」と板木をたたく音が聞こえてきました。
『はて?』ととうべえさんは立ち止まりました。すると、板木の音がはやくなってきました。「コーン、コーン、コーン!」
『これは大変だ、火事だべぇ!』すると暗やみの中、高張ぢょうちんが浮かびあがり数がどんどん増えてきて、それが波をうつように走りだしました。
『火事だ!火事だ!』と叫びながらとうべえさんも追いかけていきました。
しばらくかけておりますと高張りぢょうちんが一つ、二つ・・・と消えていきます。でも板木だけは「コーン、コーン!」となっておりますので、とうべえさんはなおもかけていきました。その時です。
『おーい、とうべえさん!』と誰かが呼ぶ声がしてハッとして振り返ってみますと、近所の人たちがけげんそうな顔をして立っています。よく聞いてみますと、なんととうべえさん畑のまん中をグルグルとかけまわっていたのだそうです。
これは、五反田にすむキツネのいたずらだそうです。
(広報さやま平成7年9月10日号より)
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